SS 「worldend」-Ⅲ

前回の続きです。



「嘘・・・・・だ・・・・」

「本当ニャ。彼は一度、死神のタマシイ集めに協力し、
 このホテルを脱出した。でも、元の世界に帰ったクラウスを
 待っていたのは、ただひたすら会社のために全てを犠牲にして
 働かなきゃいけない、辛い現実だったニャ。
 彼はいわゆるブラック会社と呼ばれてるような会社に
 勤めていたみたいニャ。毎日、彼は身も心もすり減らして
 働いた。でも、このままでは、会社に殺されてしまう、
 それならいっそ・・・・・・・・・・とクラウスは思ってしまったんだニャ。

 そして、彼はビルの屋上から身を投げたニャ。」


「きっと、地面にたたきつけられるまでのわずかな間に、
 このグレゴリーハウスのことを思い出したんだニャ。
 もう一度、あのホテルに戻れたら、と
 彼は思った。だからもう一回帰ってきた。
 
 でも、クラウスが本当の自分の姿に気づいてしまうまで、
 それほど猶予は残されていなかったニャ。

 クラウスは、さっきやっと思い出したんだニャ。
 自分がすでに死んでいることを。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「本来なら、イメージを保てなくなった彼の姿は、
 首が折れて、頭がつぶれた無残な死体に戻るハズだったニャ。
 でも、この世界は思いの強さが全てニャ。
 クラウスは最後の力を振り絞って、あの幻想的な光景を
 生み出したんだニャ。

 クラウスは、きっと、君がいたから、
 君にそんな姿を見せたくなかったから、
 あの炎は美しかったんだと思うニャ。」

「最期まで、カッコつけちゃって・・・・・・
 いつもそうだった。いつも・・・・・・・・・・」


そこまで言うと、急に彼との思い出が蘇ってきて、
胸が苦しくなって、涙がぼろぼろとこぼれた。


「クラウスは大馬鹿ニャ。自分で帰る道をなくしてしまったんだから・・」

「・・・・いつから、気づいてたの・・・・?」

「クラウスが戻ってきたときに、ちょっと前と様子が違うと
 思ったんだニャ。なんというか、存在が希薄になったような・・
 最初は気のせいかと思ったけど、
 だんだん僕にも彼の本当の姿が見えるようになってしまったんだニャ。
 
 だから僕は、クラウスは、もうあまり長くここにいることはできないって
 わかったんだニャ。

 だから、できるだけ、クラウスのそばにいて、
 力になりたかった。」

「最初から、わかってたんだね・・・・・・」




「・・・・・・もうひとつ、大事な話があるニャ。
 マリア・・・・君は今すぐ、このホテルを出たほうがいいニャ。」
「どういうこと・・・・?」

「クラウスも言ってたかもしれないけど、
 君はもう一人でこのホテルを出られるニャ。
 君の心の傷は、とっくの昔に癒えてた。
 ただ、クラウスの記憶の残滓、平たく言うと
 クラウスの亡霊の意思、というか一種の呪いで、
 ここにつなぎとめられてただけニャ。
 
 今の君なら、グレゴリーが追いかけてきたって
 逃げ切れるはずだニャ。
 だから、一刻も早くここを出るニャ。

 君も今なら、本当の自分の姿が思い出せるはずニャ。」

「本当の、自分の姿・・・・・・・・」



その言葉で、忘れかけていた記憶が再び戻ってくる・・・・・






続く






 
 

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